
- 視点シリーズ9
- 福島県の自殺対策
福島県保健福祉部参事兼障がい福祉課長安海好昭
平成10年以降、全国の自殺者数は毎年3万人前後で推移し、福島県においても、約600人の方々が自ら尊い命を絶つという状況が続いております。平成19年の自殺者数は、589人(人口10万対自殺死亡率28.6、全国ワースト9位)であり、平成18年の自殺者数618人(人口10万対自殺死亡率29.9、全国ワースト8位)に比べて減少したものの、依然として多い状況にあります。
本県では、これまでも精神保健福祉対策の一環として、精神保健福祉センターや県内の各保健所での相談や研修会、うつ病対策事業など、自殺予防に関連する取組みを行ってきました。平成19年12月には、「福島県自殺対策推進行動計画」を策定し、この計画に基づき、現在、全庁を挙げて総合的な自殺対策に取り組んでいるところであります。
福島県障がい福祉課が実施している主な自殺対策》
② 国、県、民間の関係機関による相談時の手引き書作成と、相談支援ネットワークの整備
③ 精神保健福祉センターでの、自死遺族対象の来所相談
④ 自死遺族支援に関係しているファシリテーター研修
⑤ 中高年のうつ病対策事業
⑥ かかりつけ医に対するうつ病診断に関する研修会
⑦ 心の健康や精神疾患及び自殺予防についての知識の普及啓発、パンフレット等の作成配布
⑧ 自殺対策推進協議会における関係機関との意見情報交換、自殺対策の点検評価
⑨ 福島いのちの電話相談員養成研修に係る経費の助成
自殺対策のキーワードとしては「ゲートキーパー(自殺のサインにいち早く気付き適切な対応のできる人)の強化と連携(ネットワーク)」であると考え、今年度から、県の相談窓口担当職員や、かかりつけ医に対する研修等を行っております。また、自殺関連の相談機関とのワーキンググループを立ち上げ、相談事例の検討を行う予定であります。これらにより、各相談機関が連携を図りながら、相談者が必要としている相談機関へ適切につなげられるようにしたいと考えております。特に多重債務問題については、多重債務相談会場に保健師を配置し、心の問題の相談にも応じる連携を一部において開始したところです。
一方「自殺(自死)遺族の方に対する支援」としましては、精神保健福祉センターに相談窓口を設置し相談支援体制を整えたほか、自死遺族支援ファシリテーター研修により遺族支援を行っている団体等の人材育成にも取り組み始めたところであります。
このような中、「福島いのちの電話」は、平成9年9月1日の設立以降、早くから県民の自殺予防に焦点を当てた電話相談を行い、現在、年中無休で午前10時から午後10時まで、さらに月1回は24時間の対応と、行政が十分対応できない部分でも活動していただき大変感謝しております。
さらに県の自殺対策を点検評価する場として、福島県自殺対策推進協議会があり、「福島いのちの電話」もこの協議会の構成メンバーとして、毎回貴重な御意見をいただいております。この場での問題提起や取組みへの提案が、本県全体の自殺対策の充実強化に大きな役割を果たすものと考えております。
このように、「福島いのちの電話」等の民間団体と行政機関が手を携え、自殺対策に取り組むことで、本県の自殺者数の減少につなげ、結果として県民一人ひとりが生き生きとした暮らしができる「心暖かな、思いやりが息づく」福島県を創っていきたいと考えております。
